イラスト:デブリと衝突して破損した人工衛星
昔から星を見るのが好きだった。
中学生の頃には庭に6インチ反射望遠鏡の観測場所を設け、夜ごと星空に没入していた。
それから半世紀余り。
居住環境の光害、夜遊びの習慣、体力の低下──
いろいろ重なって、実際の夜空を見上げる機会はすっかり減ってしまった。
しかし、イラストは別である。
科学がどれほど進んでも、宇宙の神秘は解き明かされ尽くさない。
写真が存在しない天体や現象も多く、
天文分野では今なお「想像力」が必要とされている。
だからこそ、天文イラストの需要は根強い。
私はそれにかこつけて、これまで数多くの天文イラストを描いてきた。
多少なりとも天文知識があるので、制作自体は楽しい。
問題は──
キーワード付与の雑さである。
「お月見」に「天文」のタグが付く。
これは、まだギリギリ理解できる。
ところが、いつの間にか
「バニーガール」にも「天文」のタグが付いている。
おそらく思考回路はこうだ。
✨天文
→ 🌜月
→ 🌕🍡月見
→ 🐰🔨🍡うさぎの餅つき
→ 🐰うさぎ
→ 👠バニーガール
検索結果には、
「天文」と「バニーガール」が仲良く並ぶ
奇妙なギャラリーが誕生してしまった。
これはさすがに整理しなければならない──
そう思ったのだが、問題はさらにややこしい。
恐ろしいことに、
この意味不明な組み合わせがごくたまに売れる。
天文目当てで来た人がバニーガールを見て困惑し、
バニーガール目当てで来た人が星図を見て首をかしげる。
誰も幸せにならないはずなのに、
ダウンロード数だけが静かに増えていく。
どうやら検索という宇宙では、
意味よりも“引力”が勝つことがあるらしい。
都市部では街灯やネオンが夜空を覆い、星の数は激減する。
東京で肉眼で見える星は数十個程度だが、
暗い山間部では数千個が確認できる。
6インチ(約15cm)の反射望遠鏡は、
月面のクレーターや木星の縞模様を十分に観測できる。
口径が大きいほど集光力が増し、暗い星雲や銀河も見えるようになる。
日本では「餅をつくうさぎ」
中国では「薬をつくうさぎ」
西洋では「人の顔」
同じ月を見ていても、文化によって解釈はまったく異なる。
そこがまた、天文の面白さでもある。
星を見る機会は減っても、
イラストの中では宇宙を自由に旅できる。
ただし、キーワードが暴走すると
「天文」と「バニーガール」が肩を並べる
理解不能な星座が生まれる。
宇宙の神秘を描くのも大事だが、
検索の宇宙を整理するのも、また大事。
私の次なる課題は、
望遠鏡ではなく──
キーワードの整頓なのかもしれない。