イラスト:白い壁に向かって考え事をする若い女性
「コピースペースのあるイラストは、商用でよく売れるらしい」
そんな甘美な噂を耳にした瞬間、私はひらめいた。
コピースペース=白壁。
なんと単純で、なんと美しい方程式だろう。
白い壁さえ描けば、あとは勝手に売れていく未来が見える……
と、本気で思っていた。
今思えば、未来が見えていたのではない。
ただの幻覚である。
とはいえ、ただの白壁では
どうしても「鬼太郎の塗り壁」になってしまう。
それは避けたい。
そこで私は、
白壁の前で考え事をしている可愛い女の子を添えてみた。
これなら塗り壁感も薄れ、
コピースペースもしっかり確保できる。
完璧な構図だ。
少なくとも、その時の私はそう信じて疑わなかった。
「これは売れるぞ」と胸を張って公開した――
その結果は、白壁のように静かだった。
いや、白壁のほうがまだマシかもしれない。
白壁には「壁」としての役割がある。
一方、私のイラストは、
“売れない壁”として、ただ立ち尽くしているだけだった。
この経験から、私はひとつ学んだ。
コピースペースとは、空いていればいいというものではない。
広告やデザインの世界で、
コピースペースは「空白」ではなく
“余白”として機能する場所なのだ。
何を置くための余白なのか
どんなメッセージが入るのか
その余白が、絵全体のストーリーとどうつながるのか
ここまで考えて、
初めてコピースペースは「売れる余白」になる。
私の白壁は、ただの白壁だった。
女の子は可愛い。
しかし、広告主が何を置けばいいのかが見えない。
つまりそれは、
「使い道がわからない余白」だったわけである。
会議で誰も触れない謎の資料のように、
存在しているのに、誰にも使われない余白。
思い返すと、なかなか切ない。
コピースペースは「空白」ではなく「機能」
余白は、視線を誘導する装置
広告では、メッセージを置くための舞台
余白があることで、主役が引き立つ
余白が“意味を持つ”と、売れやすい
つまり余白とは、
ただの空きスペースではなく
デザインを支える黒子なのである。
白壁の前で考え事をする女の子のイラストは、
今も私のギャラリーに静かに佇んでいる。
売れはしない。
だが、削除するほどの勇気もない。
もはや
“ギャラリーの負の遺産”として、
静かな存在感を放っている。
しかし、この失敗が
コピースペースの奥深さを教えてくれたのも事実だ。
売れなかったイラストほど、
後からじわじわ効いてくる。
まるで人生の教訓のように。
これからも私は、
「売れると思ったのに売れない」
そんな小さな敗北を楽しみながら、
イラストうんちくを増やしていくつもりである。